先日ちょっとご縁があって、
とある高級ホテルの部屋に入らせてもらったんです。
部屋に入ってすごいなーと思いつつ、
ふと目に止まったのが、
充電ケーブル。
これがね、細いリボンで上品に括ってある。
思わず「おぉ…」って小声が漏れた。
サイドテーブルには小さなチョコレート、
ターンダウンの枕元には「明日の天気カード」。
——こういう“細やかな気遣い”の連打に、
僕は軽くノックアウトされたわけです。
ここでふと考えた。
「高いから、こういうサービスが“できる”のか。
それとも、こういうサービスを“やってるから”高いのか。
この順番、実はビジネスの現場でよくごちゃ混ぜになってる。
例えば、飲食店でドリンク一杯サービス、
ホテルでラウンジ開放、朝食無料、スイーツ食べ放題…。
「お客さんに喜んでもらうためのプラスアルファ」ってやつ。
気持ちはわかる。僕もチョコは好きだし、ケーブルがリボンで整ってたらテンションは上がる。
でもね——ここで“やりがち”なのが、
価格は据え置きのまま、サービスだけ足していくこと。
これは、値上げじゃなくて“値下げ”なんですよ。
今までと同じ価格で、より多くを与える。
お客さんは一度それを覚えると、
「次もそれが標準」になる。
期待値は上がって、利益は薄くなる。
これが“足し算の値上げ”のワナ。
じゃあ、値上げしても選ばれる状態って何なのか。
答えはシンプルで難しい。
「体験の再設計」です。
表層の模倣(猿まね)ではなく、
ゼロベースで「本来の価値」を定義し直す。
僕のおすすめは次の3ステップ。
1)価値の“核”を一句にする。
「このブランドはお客さんの何を変えるのか?」
快適さ?自尊感情?時間短縮?安心?——ひと言で言えるまで削る。
例:高級ホテルの核が「熟睡と回復」なら、
ケーブルのリボンは“整っている世界”の象徴になるし、
天気カードは“明日の不安の先回り”になる。
つまり小ワザが核と“一本の線”でつながる。
2)核から“儀式”を設計する。
チェックイン→滞在→チェックアウト→帰宅後の余韻まで、
核を体感させる小さな儀式を通しで並べる。
・到着10分で「雑音が消える」オペレーション(書類ゼロ、荷ほどき代行など)
・就寝前の“眠りのチューニング”一式(照明・香り・温度・枕カルテ)
・翌朝の“迷いゼロ”同線(天気・交通・コーデ提案)
リボンもチョコもカードも、
“核を濃くする儀式”として配置されると、
ただのオマケが「値段の理由」になる。
3)価格は“物語の章立て”でつくる。
ベーシック/シグネチャー/レジェンド…と階段をつくり、
各段で「核の濃度」が段違いで上がるようにする。
無料の足し算ではなく、「章が進むほど、世界観が濃くなる」。
ここで初めて値段は堂々と上げられる。値札は説明ではなく“約束”になる。
ポイントは、施策から入らないこと。
「チョコ置けばいいんでしょ」
「天気カード作ればいいんでしょ」
から入ると、原価と手間だけ増える。
逆に、核→儀式→章立ての順で設計すると、
不思議と“やらないこと”も決まる。
引き算が効くから、むしろ利益が残る。
値段は“足した量”ではなく、“濃くなった体験”の結果なんです。
あなたのビジネスの核は何でしょうか?
言葉が立てば、値段も立ちます。
言えないうちは、何を足しても“値下げ”になる可能性が高い。
——高いからできるんじゃない。
やるから高くなる。あなたの“核”、何ですか?