「現場」から入ると、話が絶対にまとまらない

ワシントンD.C.の地下鉄の構内で、あるヴァイオリニストが演奏していました。

彼は、グラミー賞を受賞したこともある世界的な奏者です。手にしていたのは1713年製のストラディバリウス。時価にして3億円を超える名器でした。

朝のラッシュ時、約45分間、バッハの難曲を演奏し続けました。

45分間の演奏で、起きたこと

通り過ぎた人

1,097

足を止めて聴き入った人

7

投げ銭をしてくれた人

30 人に届かず

その数日前、彼のコンサートは満員でした。しかも、チケットは決して安くはありません。

同じ人が、同じ楽器で、同じ腕前で演奏しているのに、「地下鉄の片隅」というだけで、ほとんど誰にも気づいてもらえなかったのです。


「先生ポジション」を取れていますか

実はこれ、私たちのビジネスにも、そのまま当てはまる話です。

「先生ポジション」を取れているかどうか。これで、相手の聞く姿勢がまったく変わります。

先生ポジションというのは、そのままの意味です。「こうすべきです」「こうした方がいいですよ」と、指導する側として話す立場のこと。優れたコンサルタントほど、自然にこのポジションを取っています。

人は権威に弱いものです。

こんな実験があります。医師から「この薬を患者に投与してください」と指示された看護師のうち、明らかに危険な薬だとわかっていても、かなりの割合が指示に従ってしまったそうです。「お医者さんが言うのだから」。それだけの理由で。

あなたにも、心当たりはありませんか。肩書きや立場ひとつで、同じ内容の話でも受け取り方が変わってしまう。そんな経験、一度くらいあるはずです。

現場から入るか、上から入るか

これは私が実際に見聞きした話です。

一営業担当として、現場に入ったとき

アポイントは、ほとんど取れなかった

先生ポジションで、上から入り直したとき

その場にいた約半数と、アポが取れた

同じ人が、同じ商品を持って行っているのに、です。

あの1ヶ月は、何だったのでしょうか

私自身にも、似たような経験があります。

現場の担当者にとても気に入っていただき、その方向けに提案をまとめ、社内的にも通ったと聞いていました。ところが、最終的な制作物のOKを出すのは、社長。つまり、本当の決裁者です。

結局、その1ヶ月、ああでもないこうでもないとやり取りが続きました。ものはとっくにできあがっているのに、です。

そして、上の方に直接お話ししたら、一瞬で終わりました。

あの1ヶ月は、いったい何だったのでしょうか。

現場を責めても、仕方がありません

なぜ、こんなことが起きるのでしょうか。

現場の担当者にも、事情があります。現場は売上を上げることが至上命題ですから、「取りこぼしたくない」という気持ちがどうしても働きます。だから、こちらが「それはやめた方がいいですよ」「その見込み客は無視していいですよ」と伝えても、なかなか踏み切れません。

でも、本来それは、現場が決めることではないのです。戦略の判断は、経営者や、その現場を率いるリーダーが決めるべきこと。

現場からではなく、上から入る。
それだけで、仕事の進み方は変わります。

だとすれば、私たちマーケターやコンサルタントの役割は、まさにその戦略を一緒に決めていく立場のはずです。

今日の問いかけ

あなたは今、どちらのポジションでクライアントと向き合っていますか。
一度、自分の立ち位置を見直してみるのもいいかもしれません。

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